がんや動脈硬化症は日本人の主要な死因です。これらの疾病の早期診断や治療を効果的に行うには、イメージング技術は極めて重要です。 我々はがんや動脈硬化症のメカニズム解明を行い、この概念を疾病の診断や治療の技術開発へ応用するために、高精度かつ高感受性のX線CT(Sci. Technol. Adv. Mater., 2016)や蛍光イメージングの技術開発を、ナノメディシンを用いて行ってきました (ナノメディシン:ナノテクノロジーと医学・医療を融合した研究分野)。 X線の吸収は造影剤の量に比例し、蛍光強度は励起光の出力に比例します。したがってX線CTや蛍光イメージングは高い定量性を保持する可視化法になります。 我々はこれまでに、疾病モデルマウスを用いた生体イメージングにより、がんの転移過程で膜たんぱく質の拡散速度が1000倍以上に変化すること(J. Biol. Chem., 2010)、末梢動脈疾患の血管新生では血管内皮増殖因子受容体発現量のわずか3倍の分布勾配が重要であること(Blood, 2011)、などを解明してきました。 モデルマウスの生体イメージング技術は、がんや末梢動脈疾患の脈管リモデリング機構の解明、ナノ粒子を応用したがんの画像診断法および治療法の基盤技術開発、などに展開し、興味深い結果が得られています。 さらに蛍光イメージングを手術で摘出したヒトがん組織の病理診断に応用することにより、がん患者の術後再発の可能性や抗がん剤の薬効を高確度で診断する技術開発を進めています(Sci. Rep., 2015; Cancer Med., 2016)。 以上の研究を遂行するために、権田研究室では、理工医の様々な学問分野を背景とするメンバーが結集し、皆のアイデア・知識・技術を融合した議論とチームワークを大切にしながら、楽しくかつ真摯に日々研究課題に向き合っています。